べっ甲博士と三兄弟

ベッ甲イソガイ

江戸末期のべっ甲工房「伊勢元」にルーツをもつ、べっ甲細工職人。べっ甲を使ったかんざし、アクセサリー、文具などを製造し直販店「ベッ甲イソガイ」で販売する。父・磯貝實氏は平成21年度東京優秀技能者(東京マイスター)として認定されている。三人の息子が技術を継承中。

べっ甲製品製造販売
Bekko Isogai

ベッ甲イソガイ

住所
〒136-0071 江東区亀戸3-32-4
tel
03-3682-4405
fax
03-3682-4408
代表
磯貝 剛
URL
http://www.bekko-isogai.jp

伝統の技術と新しい視点で生み出す、三者三様の作品

ベッ甲イソガイは亀戸と浅草に店舗を構え、江戸以来の技術を今に伝える工房。東京マイスターでもある磯貝實社長と息子であり、弟子の三兄弟が技術を継承し、店頭にも立ちながらその看板をともに支えている。

モダンでスタイリッシュなベッ甲イソガイの作品は、伝統的なかんざしからチェーンネックレス、名刺入れまで様々。現代の生活に寄り添うアイテムが中心で、べっ甲の新たな魅力に気付かせてくれる。丁寧に作り込む長男・克実氏、企画やアイデアを次々と生み出す次男・剛氏、外でアクセサリー職人の経験を積んできた三男・大輔氏は仕事が早い。各々の強みを活かして生み出す作品には三者三様の個性が現れる。

職人が伝える本物のべっ甲製品の魅力

昨今は高価なものとして敬遠されがちなべっ甲細工だが、「一般の人、初めてべっ甲を持つ人にも馴染めるもの、使いやすいものを作ろうと心がけています」と剛氏は話す。プラスチック製の類似品も多く出回っているが、柄を似せることはできても肌触りを似せることはできない。肌馴染みの良い本物のべっ甲製品を手頃な価格で届けることができるのは、中間企業を挟まずに店舗で直販できるベッ甲イソガイならではだ。

店舗では商品の購入はもちろん、その場で作業の様子を見ることが可能。また、べっ甲の魅力や手入れの方法といった話を直接聞くこともできる。多くの職人は制作に没頭するあまり工房から出る機会が非常に少ないが、顧客との接点として店舗がもつ意義は大きい。自身にとっても店舗は思わぬアイデアを授けてくれる貴重な場。あるときは大胆なデザインの眼鏡フレームのオーダーが入り半信半疑で納品したが、後日そのデザインをアレンジした試作品を店頭に並べたところ反応は上々。商品化を検討するマーケティングの場にもなっていると言う。

タイマイの養殖研究も開始。べっ甲を次世代へ

材料の希少化がべっ甲製品の価格高騰に繋がり、べっ甲離れの一因になるという悪循環は業界内でも悩みの種。近年は材料の安定した供給を目指し、タイマイの養殖研究を開始。養殖のための合同会社を設立した。材料が調達できれば、これからもべっ甲細工を続けることができる。そしてべっ甲の魅力をより多くの人に伝えることができる。べっ甲に傾ける彼らの情熱は江戸から現代へ、これからも一歩一歩と前へ進み続ける。