刺繍の駆け込み寺

刺繍屋 阿部

ミシン刺繍の草創期から操業する、昭和30年設立の刺繍工房。同時稼働する11頭式コンピューターミシンをはじめとした機械を使い、OEMの服飾品の装飾から一点ものの校章、短納期のタレント衣装まで、刺繍に関する仕事を幅広く手掛ける。

刺繍加工
Shisyuuya Abe

刺繍屋 阿部

住所
〒135-0013 江東区千田16-2
tel
03-3644-1211
fax
03-3644-1211
代表
阿部 一正
URL
http://www4.point.ne.jp/sisyuu

メリヤス検査で鍛えられた品質チェック

メリヤス業者が集う洋服繊維の本場、墨田区でも繊維業の衰退は著しい。中国をはじめ海外のマンパワーに圧されている。300社以上いたはずの組合員も現在の加盟数は60前後、その中でも現役で操業しているのは20〜30社程度しかない。

刺繍屋を営む阿部氏も市況に無関係とは言えない。最大10名以上で操業していた時期もあったが、先代を亡くし6年前に体制を変更、現在は個人事業主に切り替えて親子二人で操業している。それでもなお、付き合いのあったメーカーやパートナーの多くとは変わらない取引が続いているという。

大手雑貨ブランドの公式タグを見せてくれた。人気キャラクターは商品一点一点の品質がブランドを左右するため、公式商品の認定が非常に厳しい。目の大きさや位置が少しブレるだけで検査から弾かれる。過去に認定を受けていた他社はクオリティが維持できず落とされてしまったと聞いた。そんな中、阿部氏の刺繍は検査をクリアし公式タグを付けることを許されている。

全国コーヒーチェーン店で特別資格所有者に贈られるサロンには、一人一人の氏名が刺繍されている。スタッフがみな着用を誇りとするそのサロンへの名入れも阿部さんの仕事。毎年約1,000名分にも及ぶ名入れは、楽しみに待つ人々を思うと雑な仕事はできない。他社に発注していた頃は名前の間違いもままあったようだが、刺繍屋 阿部が請けるようになってその品質の差は歴然。ついにはマーケティング部長から直々に感謝状が届いた。

特に気をつけていることは何かと尋ねたら、「厳しいメリヤス検査があった頃から仕事をしているので、これぐらいの品質は当たり前だと思っているだけです」と答える。「妥協すると通らないのは明らかなので、それなら徹底的にやりたい」。

一点もの、短納期…割に合わなくても「やる」

タレント衣装やイベント装飾などの一点ものも多く手掛け、テレビで阿部氏の刺繍が大きく映し出されることも少なくない。企画から撮影、放送までのスケジュールがタイトなため、首を縦に振る業者は限られている。そんな中、短納期でもできるものなら深夜までかかっても引き受ける。

品質を追究すれば、それだけ時間も手間もかかる。たとえ到底割に合わない仕事でも「気に入るまでやる」と断言する阿部氏に対する顧客からの信頼は厚い。刺繍屋 阿部の品質と情熱は、他の追随を許さない。