細部までこだわる、手刷りのシルクスクリーン
亀戸水神の駅前に、アメリカンガレージを思わせる緑色の工房が佇む。中では、20代と見える若者たちが黙々と作業に取り組んでいた。秘密基地のような空間で、スウェットにイラストが刷り上がっていく。
グッドフェローは、シルクスクリーンを中心に衣類の加工を行っている。南青山で話題のカフェのユニフォームから人気アーティストのコンサートグッズまで幅広く手掛けるが、数万単位の量産や特殊な二次加工などは信頼する協力会社に委託し、自社工房では手刷りのシルクスクリーン印刷に専念する。「手刷りだと機械と違い微妙な力加減ができるし、細かい線まできれいに丁寧に仕上げられる」と取締役の宮田氏は語る。
“好きが仕事になれば良い”社員の柔軟な発想が付加価値になる
工房で働く社員は20代が中心で、バイクやスケートボード、音楽など趣味にも感度の高い方が集まっている。机の隅の白紙にはシルクスクリーンの新しいアイデアがイラストで描き起こされていた。顧客からの注文に対し、トレンドやコストパフォーマンスを加味した提案を返すのが同社なりの付加価値。そこには多様なバックグラウンドを持つ社員の柔軟な発想が欠かせない。社員の声や能力を積極的に取り入れ、自分のことのように楽しみながら提案を考えるという。「繰り返しの作業ばかりではつまらないから」と微笑むが、その根底には「依頼してくださるお得意様の思い入れを受け止めて仕事をする」という企業としての理念が感じられる。
亀戸連合の輪が織り成すアイデアは無限大
取締役は原宿でファッションブランドのプレスとして働いていた経験を持つ。当時はストリートブランド全盛期で、日々の仕事は刺激的だったものの、ブランド飽和状態になり10年先の展望が見えなかったと振り返る。当時の人脈から継続的に依頼が舞い込む一方で、最近は近隣から頼られるケースも増えてきた。ホルモン焼きの人気店、町のダンススクール、小学校のPTAにも揃いのユニフォームを製作し、亀戸連合とも呼ぶべき地域の輪はどんどん広がっている。
シルクスクリーンと聞くと衣類を連想するが、グッドフェローでは和菓子屋との共同開発で竹炭を使った羊羹への印刷にも取り組んでいる。クッションやソファなどの家具、キャンプ用品にもシルクスクリーン技術は有効で、今後のコラボレーションを企画中。新しいシルクスクリーンのカルチャーを作りたいという同社では、展望が10年どころでは収まらなさそうだ。