希少となった在来種の綿にこだわり、顧客の好みに応じて配合
森製綿所の綿の品質には定評がある。衣類に適した繊維の細い品種が多く開発される中、コシのある繊維の太い上質な在来種の綿を厳選して輸入。10種類の綿を常時取り揃え、用途や注文に応じて配合する。
掛け布団には身体に寄り添う繊維の長い綿、敷き布団にはコシのある繊維が短い綿。座布団にするならコシがある綿のほうが身体が安定して疲れにくい。関西地域では繊維が長いもののほうが好まれるし、気温の低い東北からの注文には綿を厚くする。確かな目利きと地域性や好みに柔軟に対応する技術力は、100年以上続く森製綿所の強みとなっている。
ヴィーガンに対応した寝具として海外からの需要も高まる
布団、座布団をよく使う寺社や演芸場、旅館からも信頼は厚い。安価で効率的に量産できる機械製造が主流になってきた一方で、機械では定型のものにしか対応できない。大きなものや希望に沿ったものを求めるには、森製綿所のようなオーダーメイドに対応する手作業の布団屋は貴重な存在だ。
インターネットの普及もあり、近年は国内のみならずヨーロッパをはじめとした海外からのオーダーも増えている。特にウールや羽毛、化学繊維を敬遠するヴィーガンの人にとって、植物性素材のみで作られた寝具である綿ふとんへの期待は高い。海外向けに「FUTON TOKYO」というブランドラインを開発し、需要に応えている。
また、綿のトレーサビリティにも世界的に関心が集まっていることから、管理された生産体制の下で無農薬で栽培され、収益の一部が現地の病院・学校の建設資金になる綿の調達にも取り組み始めている。
時代の変化に合わせて刷新する商品、それを支える変わらぬ技術
国内では新品の製造だけでなく、綿の打ち直しの注文も多く集まる。「嫁入り道具に持たされた」「母の手作り」など、思い入れがある布団は簡単に手放せないが、生活の変化により布団を敷く家庭も減りつつある。そのため、打ち直しだけでなく、敷き布団から座布団に変えるなどの仕立て直しにも柔軟に対応している。
時代が変わっても変わらず布団を愛する顧客のため、昔ながらの技術を守りつつ「素材を大切にしている」とは四代目・森和太氏の弁。生地に使う静岡の遠州木綿や京都の柿渋染を自ら調達し、長く使いたくなる品質の良いものを仕立てるための努力を重ねている。