受け身の産業からものづくりで喜びを実感できる企業へ
時代につれ世間のニーズは変わっていくもの。印刷業界にもまた、変化が求められている。従来、印刷業は顧客から受け取ったデータを印刷する「受け身」の産業と捉えられてきたが待つだけの営業で前進はできない。ものづくりの最高の喜びは、考えたアイデアを製品化して販売し対価を得ること。「喜びと感動を与えられることを実感できる会社にしたい」。プライズコミュニケーションの新たな展開はここから始まった。
印刷会社であることを大前提に、ありそうでなかった新事業として着目したのがペット業界だった。専門家へのヒアリングや市場調査を重ねて「スパダン工房」はリリースされた。
紙を扱うプロフェッショナルとしてプライズコミュニケーションが開発した、紙の強みを活かしたペット用品シリーズ「スパダン工房」。ダンボール会社と共同開発した強化ダンボールで様々なペット用品を展開している。ペット用の衣装クローゼット「わんクロ」は紙なので軽く、女性や高齢者でも扱いやすい。不要になった場合でもリサイクルしやすく、何より安価に抑えられる。また、衣装用ハンガーは彼らの得意領域である印刷加工が柄やデザインのバリエーションを実現し、「選ぶ楽しさ」という新たな価値を生み出すことに成功した。
印刷の強みをフルに活かし、新事業へ参入
もちろん印刷機、加工機は身近にあるわけで、試作品がすぐに作れる、イメージをすぐ形にできる環境はプライズコミュニケーションならではのもの。ペット業界にはない強みと言えるだろう。試作品のつもりで展示会に持ち込んだ猫のベッドも長蛇の列ができるほど好評であった。
新事業は彼らの強みを活かした形で軌道に乗り始めているが、人気がゆえに現在の手作業による生産体制には限界が近付いている。また、通販市場の成長によりダンボールの需要が高まり素材価格が上がっていることも悩ましい。コストダウンと量産体制は今後の新たな課題である。
課題は見えつつも、スパダン工房の躍進はペット業界に留まらない。軽量で小型の家具は、子供部屋のインテリアや介護の現場でも役立つ可能性を秘めているし、また、災害時の避難所生活に導入することでプライバシーの保護と快適な空間づくりに寄与することができるのではないかと画策している。