配管・製缶の“二刀流” 複雑な商業施設からヘリコプターの部品まで網羅
アマドックは拠点を北砂と千葉に設けており、それぞれで違った業務を請け負う。小規模な鉄工所は数あれど、大規模施設での需要にも耐えうる在庫を抱えて製造を行う工場は関東でも5、6社。同社でも、巨大商業施設の配管部品などを数多く手掛けている。代表的なところでは、渋谷の公園跡地の再開発や、陸上競技場の改築にも携わっているという。
建物の形や構造に合わせて配管も変わる。単純なL型だけならロボットで作るほうがスムーズだが、クランクを繰り返すような部品加工はプログラムが複雑なため、ロボットではかえって時間がかかる。そういった部品は、アマドックでは手練の溶接職人が手作業で作っている。建物のデザイン性が高まり複雑な構造が増えてきた今、コストパフォーマンスの高いアマドックへの期待は高い。
一方、北砂の製缶部門では、鉄やステンレスの加工を幅広く手掛け、オーダーに応じて図面の書き起こしから納品まで支援する。生産ラインを持たず、柔軟に対応できるのは中小企業ならではの強み。さまざまな相談を受けてきた分ノウハウも蓄積され、現在ではプラント施設の階段、手摺りから架台、タンク、ヘリコプターの部品に至るまで、小ロットから多品種の製造に幅広く対応できるという強みにつながっている。こうして100年以上の実績を積み重ね、高い品質・適正価格と納期厳守による厚い信頼を勝ち得ている。
社員一人一人の発想や技術が、一隅から千里を照らす
アマドックといえば、親子向けワークショップ「鉄とあそぼう」が地域で人気。北砂の工場を会場に、子供用のヘルメットやつなぎを用意して溶接を体験したり、鉄材に色を塗ったりしてオリジナルのネームプレートや一輪挿しを作る。町工場は中が見えず、地域との接点も少ないということで始めたワークショップだが、子供を介して地域住民との距離もぐっと縮まった。
天台宗の開祖、最澄は「一隅を照らす」という言葉を残した。自らの持ち場を全うし、その場で光り輝くことが社会を明るくする。同社ではこの言葉を社是として掲げ、一人一人の発想や技術を尊重する。歴史ある企業ながら新規事業やワークショップなどに次々と挑戦するのも、この言葉のもと、社員を信じて背中を押す社長の懐の深さの賜物。いきいきと光り輝く社員たちが一隅を照らし、千里を照らす未来を感じた。