住む人の安心のために工法から研究開発していく
木材問屋、建設会社、工務店を主な取引先としているが、リフォームに関しては施主から直接相談を受けることもしばしば。人口の推移やライフスタイルの変化により空き家問題が顕著な昨今は、中古住宅をリフォームしようとしても柱や梁などの損傷が激しく使えないことも多い。内装に主軸を置くリフォーム業者が多いなか構造から提案できる知見の深さは、半世紀以上にわたり住宅建築を手がけてきた江戸川木材工業ならではの強み。OB客、設計士からの紹介が多いことも頷ける。
とりわけ木造建築における「制震」への取り組みは業界内でもいち早く、20年を数える。「ビル用ダンパーの技術を木造建築に展開できないか」という提案からオイルダンパーのノウハウをもつ日立オートモティブシステムズと木造建築のノウハウをもつ江戸川木材工業とのコラボレーションプロジェクトが発足、「Hiダイナミック制震工法」を開発した。
この工法は今やハウスメーカーの半数以上が採用しており、個人住宅だけでなく福祉施設、学校など2〜3階建ての木造住宅で広く活用されている。安心・安全な建物を提供することがトレンドになっている今、コストとリスクのバランスが良い制震工法は今後も注目を集めるだろう。
積み重ねてきた経験と実績、そしてデザインを携えて海外展開へ
もちろん店舗、住宅の施工でも評価は高い。美術館やコンサートホールなどの文化施設の床や学校の体育館、人気のカフェでも採用されている。機能や品質の面で丁寧に積み重ねてきた経験や実績にデザインの力を融合し、さらなるフェーズへ踏み出しつつある。
西日本工業大学、福岡県との産官学協業プロジェクトでは、ダンパーを店舗内装に取り込むなど、斬新なリノベーションのアイデアが次々と創出された。学生の視点により機能面だけでなくビジュアル的な観点を加えられたことは、今後のプロダクト展開にも影響を与え得る大きな刺激となった。
2018年4月にはミラノサローネにも出展。フィードバックや知見を得て、次回は上海ミラノサローネへの挑戦を考えている。安心と快適は国内だけでなく世界共通のキーワード。江戸川木材工業は、木の空間が提供する価値や魅力を海外にも広めようとしている。