リアルを入口に、幅広くコミュニケーションをデザインする
創業以来、木工による展示会のブース制作に特化してきた博展がバブル崩壊を機に着目したのは、顧客が抱える幅広い“コミュニケーション”のニーズだった。同社はプランニング、空間、グラフィック、映像、デジタルコンテンツなどからなるクリエイティブチームを組織し、外部クリエイターと連携してブース以外の制作にも取り組む。事業領域が大幅に広がったことから、約15年前からは企業理念を「Communication DesignⓇ〜人と人の、笑顔が創り出す未来へ。」と再定義した。
博展は顧客からの要望に「できない」とは言わず、実現の方法を考え、手を尽くす。顧客との間には「リアルな“ものづくり”なら博展」という関係性が生まれ、相談が絶えず舞い込んでくる。
共創スタジオ「T-BASE」は社内外に対話と“ものづくり”を生み出す場
2020年には埼玉から制作拠点を移し、辰巳に共創スタジオとして「T-BASE」を開設。辰巳は都心や展示会の多い東京ビッグサイトにもアクセスが良く、好都合な立地だった。自社工房としてだけでなく、「共創スタジオ」の名の通り、ここには顧客やパートナーが利用できるスペースがある。机上の議論だけではイメージできない、店頭での商品展示や照明の当て方などを試すことができる。
辰巳に移転したことで社内のコミュニケーションにも変化が生まれた。築地本社とも距離が近いことから、本社のクリエイティブや営業メンバーがこまめに足を運び、直接の対話が増えたという。「T-BASE」は“ものづくり”だけでなく、対話とアイデアを生み出す場としても機能し始めている。
「地域」と「未来」に目を向け、江東区に根を張っていく覚悟
T-BASEで働くようになり、社員からは「地域と関わりを持ちたい」という声が挙がっている。本社のある築地では、中央区の大手企業とともにフィールドリサーチプロジェクトをした経験がある。ものづくりの盛んな江東区でさまざまな業種の人と接することで、事業に新たな幅が広がるのではと期待する若手社員は多い。
同社では2022年にExperiential Design Lab.という新たなチームを設立。5年後、10年後にリアルの価値はどのように変化するのか、イベントの未来を作り出すことを目的としている。地域との価値創造や周辺企業との共創を視野に入れつつ、まずは新たなホームとなった江東区のフィールドリサーチを予定しているという。リアルの価値を知る博展ならではのアプローチで、地域のものづくり企業として第一歩を踏み出そうとしている。