船好きたちの 造船ドック

墨田川造船株式会社

1913年に向島で創業。100年以上の歴史を誇る造船所で、海上保安庁や警察などに小型高速艇を納入している。1969年に江東区へ移転し、高速艇の量産体制を整備。近年は進水式の公開や清掃活動などを通じ、地域との結びつきも深まってきている。

船舶の設計・製造・販売
Sumidagawa Shipyard

墨田川造船株式会社

住所
〒135-0052江東区潮見2-1-16
tel
03-3647-6111
fax
03-3647-5210
代表
石渡 秀雄
URL
http://www.sumidagawa.co.jp/

海上保安庁や海外の沿岸警備隊が活用する小型高速艇を製造

墨田川造船は小型高速艇に特化し、海上保安庁が取り締まりや救難を行う巡視船艇を製造している。追走できるスピードやアタックを受けた場合の衝撃の吸収・分散など、通常の船舶とは違った機能が求められる高速艇は、用途や環境によって必要な装備が異なるため、調査から設計、製造までに5年以上を費やすことも珍しくない。

同社で製造された高速艇は8割が国内、2割はODAによって日本から海外に供与される。近年ではマレーシア、インドネシア、ミャンマーなどの東南アジアからスリランカ、アフリカのジブチでも沿岸警備隊の巡視艇として活躍している。

技術者の若返りを試みる、少数精鋭のスペシャリスト集団

都内にも造船所は数あれど、自社で設計する造船所はそう多くない。特殊船に特化しているとはいえ、墨田川造船のような50名規模の企業で製造とは別に設計部門を設けているのは珍しいケースと言えるだろう。

また、工場ではベテランの職人に混じって20代前後の若い社員の姿も見られる。技術者の平均年齢が70、80代と高齢化してきたことを懸念し、墨田川造船では近隣の墨田工業高校や溶接の専門学校にもリクルート活動を行っている。同社で求められるのは特殊技術で、継承にも時間を要する。そのため、職人が引退する前に若い世代に技術を継承することが欠かせないのだ。

設計と製造の両面から少数精鋭のスペシャリストが墨田川造船を支えている。

進水式が生んだ地域との接点。移転から50年、これからは「地元の造船所」へ

確かな技術力が高い評価を得る一方で、公表できない案件が多く、地域との関係構築には頭を悩ませてきた。鉄板を叩く音や溶接の閃光は周辺住民のクレームに結びつき、東京湾で試運転をしていると警察に問い合わせが寄せられた。

そこで、東京消防庁や海上保安庁の協力の下、日本中小型造船工業会との共催で進水式を一般公開し、近隣の枝川小学校の児童、墨田工業高校の生徒を招待した。海上保安庁の職員も白の制服で登場し、進水式は大盛況。何をしている会社なのかを子供たちに紹介する機会となり、地域住民との距離もぐっと縮まった。

潮見駅周辺の企業、ホテルと連携した町内清掃も始まり、ようやく地域や企業との結びつきが増えてきた。「地元の造船所」として、地域の理解を得ながら技術の向上に取り組む。