日本初の台車「ダンディ」は清澄白河から生まれた
清澄白河駅前の目抜き通りに面したショールームを覗くと、主力商品である台車「ダンディ」シリーズ第1号のレプリカがスタイリッシュに飾られている。商社として創業した同社だが、農業用トレーラーの製造、輸出にシフト。戦後の高度経済成長で運搬や輸送の需要が急激に高まると、1965年には日本初の台車「ダンディ」を開発した。量産体制を整え、国内外に普及した「ダンディ」は台車の代名詞となり、今も国内の台車のJIS規格の礎となっている。
20年使ってもまだ頑丈、世界各国の空港がお墨付きのHANAOKAブランド
同社の開発するマテハン(移動運搬)機器類は、特にプロユースとしての需要が高い。家電量販店や酒屋などでは、150-500kg級の重い商品を日常的に運搬する。安価なマテハン機器では強度が耐えられず、すぐにパイプが潰れて使い物にならなくなるが、「ダンディ」シリーズは10年、20年と使い続けてもなお頑丈だと評価が高い。また、空港では同社のドーリーやバルクカートが多数活躍している姿を目にすることができる。安心、安全にはひときわ厳しい目を持つ国内外の航空各社と長年に渡り直接取引をしていることからも「HANAOKA」ブランドへの信頼の厚さがうかがえる。
ハードユースな現場でも信頼を勝ち取る理由は、そのリサーチ力にある。現場スタッフへのヒアリングやユーザーテストを繰り返し行い、また利用シーンを数百時間にわたりビデオ撮影してユーザーの動作をつぶさに観察する。そうして掘り下げられた現場での利用特性や本当の課題を、長年培ってきた同社の技術で補い、人間工学を含むデザインで魅力へと転化させる。デザイナー監修の最新型プラスチック台車「ダンディXシリーズ」は2019年グッドデザイン賞を受賞した。
技術力とデザイン力で領域を広げ、いつかは街のシンボルに
最近はIoTを駆使した製品の開発にも注力。航空機整備格納庫の環境(段差やスロープ)にも強いAGV(無人搬送車)の共同研究を全日空と行い話題を呼んでいる。また、機能重視になりがちなマテハン機器でもデザイン性を追求し、隠すべき裏方からブランド価値を高めるツールに転換させられないかと可能性を模索している最中だという。
87年の歴史を持ち、技術力とデザイン力で今なお活躍の場を広げる同社。これまでは製造一筋で業界の信頼を勝ち得てきたが、近年ではリニューアルしたショールームを通じて地域との交流も生まれつつある。この街が生んだ発明として、台車が清澄白河のシンボルのひとつになる日もそう遠くはないだろう。