美しさに妥協なし、手間暇かけて作られるこだわりの江戸切子
素材が柔らかく輝きに定評のあるクリスタルよりもソーダガラスを使うことにこだわりを持つ。加工に手間はかかるが、ソーダガラスで作られた華硝の江戸切子は硬く、たわしなどで洗っても傷がつきにくく清潔で美しい状態を保つことができる。そのため華硝のグラスは飲食店での評価が高い。
ソーダガラスでも気高い輝きを引き出せる秘訣とは何か。柄を削り出した直後の半透明に曇っている硝子を、表面を溶かして曇りをとる酸磨きではなく、何倍も時間と手間のかかる手磨きを選び美しさを追求する。筋の1本1本を丁寧に手作業で磨くことで、華硝が生み出す江戸切子はきめ細かい柄の角一つ一つにまで輝きが宿る。
ランプや独自の紋様で伝統をアップデートしていく
技術を別の形へ転換する取り組みのひとつとして、10年前から照明を手掛けるようになった。ライフスタイルが変容しつつある今、華硝は生活の中心にある間接照明に着目。同じデザインは2つと作らず、たったひとつしかないものの価値を楽しむインテリアとして好評を博した。卓越した技術と芸術性を兼ね備えた工房として、2007年度には東京都の地域資源活用事業計画第一号として認定を受ける。
また、伝統紋様の継承と並行して新たな紋様の開発にも尽力。繊細で緻密な「米つなぎ」の切子は華硝を代表する独自の紋様で、洞爺湖サミットでの贈呈品にもあしらわれた。伝統をあくまでもベースと捉え、時代とともに歩んでいく取り組みを怠らない。「伝統を継続するにはいま一番良いと思えるものを作ること」と伝統の更新にも積極的に取り組んでいる。
江戸切子発祥の地、日本橋にも出店しブランドを揺るがぬものにしている華硝。海外からの観光客も特別な土産物として買い求める人が増えている。「江戸切子と言えば華硝さん、と言われるようになりたい」と語り、今日も新たなチャレンジに勤しんでいる。