ものづくりも やりとりも 緻密で繊細

有限会社市瀬硝子工芸

1959年の創業時より、ガラス食器へのプリント加工を行っている。焼成時の緻密な温度管理による繊細なグラスへの加工や、他社で断られた加工にも柔軟に対応する姿勢に定評があり、大手企業や高級ブランドのOEMでの引き合いも多い。

ガラス製品への印刷加工
Ichinose glass

有限会社市瀬硝子工芸

住所
〒135-0004 江東区森下4-13-5
tel
03-3634-6456
fax
03-3635-5232
代表
佐山 修
URL
https://www.glass-tukurou.com/

耐久性の高いセラミックプリントが得意。高級ブランドのOEM実績も多数

60余年の歴史のうち、約50年はセラミックプリントを手掛けてきたという市瀬硝子工芸。ガラスへの印刷にはホットスタンプや有機インクによる印刷などさまざまな手法があるが、使っているうちにインクが剥がれやすくなるものも多い。一方、セラミックプリントは耐久性に優れ、食洗機にかけても落ちることはない。

そのため、ビールやワインの飲料メーカーや輸入代理店はもとより、大手航空会社のファーストクラスや空港ラウンジ、あるいは鉄道の食堂列車で使われるグラスのオーダーなどOEMの需要が高い。また腕時計や輸入車、ジュエリーなど、高級ブランドのノベルティ品にも市瀬硝子工芸の技術が求められる。

難易度の高い繊細な加工も経験とデータに基づいて丁寧に実現

一般的にセラミックプリントは約600℃で焼成するが、高級なワイングラスの多くは飲み口が薄く細足で、温度調整に失敗するとグラスが変形し商品にならなくなる。加工賃だけでなくグラス自体の原価も高いため、代理店が丁寧で歩留まりの高い加工業者に発注しようとするのは当然だろう。市瀬硝子工芸の緻密なプリント加工を支えるのは職人たちの経験と技術。電気窯や機械を駆使しながらも、最終的には人間の力加減や判断力が物を言う。

オンラインで新たな顧客層を獲得、小ロットや他社ができない加工にも対応

かつては食器だけでなく照明器具や化粧瓶の加工など、多岐にわたる下請けを行っていた。大量発注は当時の彼らにとって魅力的な側面もあったが、採算面ではデメリットが多いのも確かであった。そこで社長の交代を機に事業方針を転換。他者が苦手とする細足や薄いグラスの加工技術をさらに高め、これまでのデータやノウハウを活かし、得意な印刷加工の領域に注力することで既存顧客からの信頼が高まり、新規顧客も増加した。

また、近年はオンラインの窓口に力を入れている。2015年に立ち上げた「グラス作ろう.com」ではオリジナルガラスプリントの注文を受け付けている。2022年、顧客開拓を目標課題に大幅なサイトリニューアルを行ったところ、新しい顧客開拓の可能性を感じたという。まだ種をまき始めたばかりだが、新規問い合わせやリピート注文の新たなチャネルとして徐々に伸びていくことが期待される。積年の技術力と緻密なデータ、そして得意分野の伸長が彼らの強みと言えるだろう。