レコード時代のノウハウを蓄積、音楽・映像ソフト特殊ジャケットのトップランナー
創業当初は印刷資材を取り扱っていた一九堂印刷所。レコードプレイヤーが一般家庭にも普及し始めた1960年代、米国から最先端のLPジャケット加工機を導入し、一時はレコードジャケットの製造が事業の大半を占めていたこともあった。時代とともに媒体の主役がCDへと変わり、事業は縮小するかと思われたが、顧客からの要望によりCDサイズの紙ジャケットを開発。紙製の特殊パッケージにも柔軟に対応する印刷会社として、音楽、映像などのエンタメ系ソフトの印刷加工で今なお業界から大きな信頼を得ており、近年では高級化粧品や食品パッケージ、店頭販促物などに進出している。
紙を知り尽くしたエキスパートが設計から加工までトータルサポート
企画から設計、製本加工など全工程をワンストップで対応できることが強み。透けるような薄紙からCDを固定できるほどの厚紙まで対応できる印刷機が揃っており、少量の箔押しであれば内製可能。中綴じ製本機や打抜き機など加工機も一通り揃えている。紙素材の質感や特性を知り尽くした設計士が、さまざまな「こんなことできる?」に印刷以外の領域も含めたトータルな提案を返していく。
さらに工場を江東区に置いていることがさらなるアドバンテージを生んでいる。築地にある本社から工場までは車で10分程度と近く、急な変更でも迅速に対応できることが特殊パッケージの製造をスムーズにしている。
持続可能な資源として「紙」が持つ価値を追い求める
独特の提案が次々と出てくるのは、常に市場や社会を見ているからこそ。本社1階には珍しいパッケージや新素材など、社長が出張先から持ち帰る「お土産」をシェアするアイデアルームが開放されている。また、年賀のオリジナルカレンダーは、自社の“技術見本”として毎年新たなチャレンジを重ねており、次なる案件のヒントにもつながっている。
また、地球環境に対する彼らの課題意識は常に高い。2016年にSDGsが発効され、世界的にサステナビリティが求められている昨今、自然に還る紙は、植林活動を通じて、持続可能な資源として再注目されている。現在も海外の新素材を研究しながら、マイクロプラスチックを排出しない商品パッケージや木質繊維を活用したショッピングバッグなどを開発中。エンタメ業界で培ってきた遊び心ある発想力と高いクオリティを武器に、これからの社会に対して紙が貢献できるシーンを拡大する活動に努めている。