品質を支える唯一無二の擂潰機
「石川工場は約120年にわたり擂潰機(らいかいき)を製造している」そう説明してもピンとこない人が大多数かもしれない。しかし、その製品は実に様々な製造現場で活躍している。薬局での軟膏の練り合わせからセラミックス素材の材料混合、染色顔料のすり潰しなどはほんの一例。石川工場の名は、「そばの水回しに石川式擂潰機を使うことが美味さの秘訣」とグルメ漫画にも載った。無料開放している導入試験室では、今日もとある大手企業が擂潰機の効果をみるべくテストを行っていた。
「石川式撹拌擂潰機」は撹拌、すり潰し、混合、ねり合わせを一度に行うことが大きな特徴だという。例えばミキサーでは摩擦熱が発生するが、擂潰機では熱が発生しにくく、加工物の特性を変える心配が少ない。また、粒子を細かにしながら同時に加工物をより一層均質なものにし、ただ混ぜ合わせることが目的であっても、仕上がりの品質の高さは類を見ない。ゆえに石川式を選ぶ顧客は後を絶たない。
とにかく堅牢、昭和期の製品も今なお現役
このメカニズムが明治期に発明されたもので、基本構造は創業期から一貫して変わっていない。担当者は「とにかく長持ちするんです。壊れないから昭和期の機械が今でもオーバーホールに持ち込まれる」と誇らしげに語る。もちろん歴代の部品は今なお絶やさず在庫を保っており、顧客は愛着ある機械を数十年と安心して使い続けている。撹拌擂潰機一筋に徹する同社への信頼は、機械同様に堅牢だ。
多様な業界に引き合いをもつ石川工場、次なる展開領域はと尋ねると「我々のことを知らない人」と答えが返ってきた。日本中、世界中に轟くナショナルブランドを支える縁の下の力持ちがユーザーの知る人ぞ知る存在に留まっているのは、「使っていることを他社に教えたくない」と顧客が渋るほどの高性能ゆえでもある。ものづくり企業がこの技術と出会ったなら、味方につけて損はない。誰もが秘密にするほどその性能は確かなのだから。