90分以内に納品するクイックデリバリー体制
中山ライニング工業を語る上で欠かせないのはクイックデリバリーサービスだろう。ブレーキの交換で1台の車がリフトを占有してしまうと、他の作業を進めることができないため、限られたリフトの回転率を上げたいという整備工場のニーズに応えるべく、オーダーを受けて90分以内には現場へ部品を届ける。
営業所に注文電話が入ると、所狭しと並んだ商品棚をすり抜けてスタッフが手際良く必要な部品を揃えていく。需要の高いパーツなら営業車にあらかじめ積んであるし、注文票は営業車にデータで転送されその場で出力するので出先から直行することも可能。営業所へ戻る時間さえも惜しい。1分、1秒でも速く。
多くの企業はエリアの拡大を目指すが、中山社長は「もっとエリアを絞りたいぐらいです」と真顔で話す。普通のサービスを広く提供するより、限られたエリアで満足度を高めることに価値があると実感しているからである。事実、地域からの信頼は厚く「さすが中山さんだね」という顧客の声はそのままブランド名になっている。
ブレーキ一筋50年、ブレーキリビルドの専門家だからできること
「様々な部品を扱う部品商がスーパーマーケットだとすれば、うちは肉屋みたいなもの」と中山社長は言う。ブレーキに特化しているからこそ、その知見は他の追随を許さない。車種に合ったブレーキパッドの選定も、自社で検証しているから説得力がある。時には前輪と後輪で違うメーカーのものを提案することもあるが、「中山さんの見立てなら間違いない」と多くの顧客がその提案に賛同し、ブレーキだけは彼らに任せているという顧客も少なくない。
自動車がある限りリビルドの仕事がなくなることはないと思われたが、ハイブリッドカーや電気自動車の普及から、徐々にその母数は減少しつつある。一方で今、同社の元には異業種からの問い合わせが増えてきているという。印刷工場の輪転機、歯科医のライトからジェットコースターのブレーキまで対象は様々。新たな領域にもブレーキのエキスパートとして果敢に挑み、領域を拡げている。「動くものにはブレーキが付いていますから」と微笑む中山社長。中山ライニング工業の歩みには歯止めが効かない。