「理化学ガラスの良さを生活に」プロが提案するユニークな使い方
理化学ガラス職人の多い江東区や墨田区へ加工用素材を卸し、大学や研究所へ販売してきたものの、近年では規格品が増えオリジナルの実験器具を求める人が減りつつある。カスタム器具を手作りで支えてきた職人たちの新しい活躍の場を作る事が問屋の使命と考えリカシツは誕生した。
理化学製品のガラスは、いわゆるコップなどの石灰ガラスとは材料が異なる。温度差約70℃が限界の石灰ガラスに対し、理化学製品に使われるホウケイ酸ガラスは温度差120℃以上あるものをさす。耐熱、耐薬品、ニオイ移りしない理化学ガラス製品は一般生活の場でも非常に有用で、レンジやオーブン、コーヒーのドリップにも安心して使用できる。「研究員に限らず、素材の良さを分かる人たちに生活の中で使ってもらいたい」関谷社長はそう語る。
リカシツのSNSには、一般的には想像し得なかったユニークな理化学製品の使い方が紹介されている。五徳をドリッパースタンドにしたり、イカ瓶にコーヒー豆を詰めたり。リカシツがアイデアを投稿することもあれば、それを見た常連客から新しいアイデアをもらうこともしばしば。ただ、リカシツはあくまでも理化学製品のプロとして、店舗スタッフや営業メンバーが本来の使い方や機能を伝えていく。BtoC向けの店舗を自ら運営することで直接顧客と繋がり、生の声を聞くことが出来る。これは卸業だけをやっていると得にくい貴重な情報と経験が詰まっている。
職人の経験と技術を活かす商品を企画する
新しい商品を開発するときは「職人さんの仕事になるかどうか」気をつけている。同じ理化学製品でもプラスチック製品は扱わない。経験と知識のもと培われたガラス職人の技術はいまや貴重なもの。他社にはない商品を作ることにこだわる。
人気商品の「取っ手付きビーカー」は、ビーカーに熱いものを入れると 「熱くて持てない!」という声をヒントに生まれた。理化学で使われるビーカーにはもちろん取っ手はないが、レンジにかけても熱くならないガラスの取っ手を取り付けた。ビーカーに指が触れない形状の取っ手に職人の工夫が活きている。
また、最近人気を博しているのが家庭用蒸留器「リカロマ」。シンプルな造形と機能性が好評でアロマ業界での認知度も高まりつつあるという。2018年には姉妹店「理科室蒸留所」も開設。同所で手掛けるハーブの蒸留委託には、地域の特産品を開発する自治体からの相談も多く集まっている。
「理化学ガラス職人が減っていくのには何らかの理由があるはず」と関谷社長は言う。だからこそ、貴重な技術に新たな価値を見出し、作ったものに対する評価もダイレクトに活かせるリカシツは理化学ガラス業界に一石を投じていく。