唯一の国内一貫生産メーカー
かつては70社を超えたという琺瑯製造メーカーも、人々の暮らしの様式が移り変わり、海外へ生産拠点を移したり、規模を縮小したり、廃業を余儀なくされる中、国内で唯一、鋼板の成型から焼成まで一貫生産を行うのはこの野田琺瑯1社となった。「昔は琺瑯用品といえば、婚礼祝いに誰かから贈られるものだったけど、今は、自分が本当に欲しいと思うものを自分で選ぶようになりました。だからこそ、少量ずつでも多品種生産を心がけています」と話すのは、野田浩一会長。自ら試作品を自宅で使い、納得したものを製品化するという。
人気の「ホワイトシリーズ」が誕生したのは2003年。夫人である善子氏の、シンプルな冷蔵庫用の蓋付き容器が欲しいという願いから、白く四角い保存容器が生まれた。冷蔵庫のスペースを無駄なく有効利用し、使い勝手の良いシンプルな容器は、著名料理研究家やフードスタイリストなどプロから熱い支持を集め、雑誌や著書などに取り上げられ大きな話題に。改めて琺瑯用品の良さが見直され、毎日の暮らしのさまざまなシーンに活用されるようになった。
真っ白な琺瑯は高い品質の証
抜かりない手仕事によって作られる琺瑯は、高い品質を誇る。元になる鋼板をプレス機にかけて型取り、きれいに洗浄した後、一つひとつ丁寧にガラス質の下釉薬を施していく。一旦乾燥させ、焼成してからさらに上釉薬を施し、ムラなく乾燥させた後、焼成、徐冷させることで、どこか温かみのあるホワイトシリーズが完成する。
琺瑯の素地は鉄(鋼板)のため熱伝導が良く、直火にかけたり、蒸したり、オーブンに入れたり、調理用具として使うことができる。もちろん、粗熱が取れたら冷蔵庫で保存して、そのまま器として食卓に出すことも可能。何役もこなす使い勝手の良さは、多忙な現代人にこそ心強い味方となっている。「最近ではSNS(ネット)に写真を公開して、食卓の様子をシェアする方も多いですね。本当に気に入ったものだからこそ、紹介していただいているのだと感じます」と野田靖智社長。乳白色の器は食卓に映え、料理を一層美味しそうに見せてくれる。野田琺瑯が追求する「機能美」は、これからも私たちの暮らしをより豊かなものにする。