誰もやっていないこと、できないことを追求する
印刷物の流通量が減少している中、秀文社印刷が活路を見出したのは特殊印刷。「他社が取り組んでいないことを」といち早く導入したのは、アート作品の印刷に適している「ジークレー印刷」だ。ドイツから輸入した最高級アート紙に12色のインクを使って印刷する手法で、4色のインクを使う一般的な印刷では出せない色の深みや厚みを表現できる。
現在は、最大A1ノビサイズ、1枚から印刷できる体制が整い、アート作品の販売も行われている。拠点を構える深川は美術館やギャラリーが点在し、アートに造詣の深い人々が訪れるエリア。すでに、「ジークレー印刷」を活かして作家の個展用作品をつくり上げた実績もあり、大きな可能性を秘めている。
また、昔ながらの印刷機やアナログな印刷手法を活かして、受注を増やしているのが和紙印刷。「都内で和紙印刷ができる会社は少ない」と知り、長年培われた職人技が強みになると確信。現在は、和紙封筒やのし紙、高級日本酒のラベルなどを印刷している。和紙は独特の質感を持つだけでなく、1000年生き続けるといわれる長持ち素材。末永く大切にしたい印刷物に適した素材として、業界を問わず提案していきたいと考えている。
お客様の隠れた悩みを察知し、まるごと対応できる「総合印刷会社」に
新規顧客を着実に獲得している理由は、フットワーク軽くお客様を訪問し、「潜在的な困りごと」にも答えを出しているから。和紙印刷の需要がないかと営業した浅草の会社は、着物を包む「たとう紙」への印刷だけでなく、加工にも悩まれていた。そこで、印刷だけ受注するのではなく、加工会社を探し出すのが秀文社印刷流。
「印刷業界は広いので、自分から動いて探せば、お客様の希望を叶える技術や会社が必ず見つかります。『誰に相談すればいいかもわからない』という困りごとを抱えたお客様に会いに行き、真摯に向き合う。その結果、思いもよらない仕事まで任せてもらえるのはありがたいです」と、次世代を担う鈴木寛明氏は語る。
印刷物の仕分け、封入、発送など一連の作業を引き受ける「まるごとお任せサービス」など、お客様の役に立つことなら、面倒ごともすべて引き受ける。たとえ仕事にならなくても、困りごとを解決しようと模索することが、次の仕事の準備になると信じている。これからも地道に新たなお客様を発掘し、「秀文社印刷に頼めば大丈夫」と多くのお客様に信頼いただける「総合印刷会社」を目指す。