選ばれる理由は、+αの頼まれていない仕事をするから
日本の高級洋家具の本流と言われる芝家具にルーツをもつイヨベ工芸社。五百部社長は「現代の名工」として表彰された実績を持ち、過去には天皇陛下ご成婚時の馬車の内張りを手掛けたことも。国会議事堂や大規模ホールの椅子張り、といった大きな仕事を日々手掛ける一方で、オフィス家具の領域でも名を轟かせている。
都心のオフィスビルは賃料が高く、独立した応接間の需要は下がる一方。そこで同社は応接間としてだけでなく、普段は会議室としても使えるオフィスデザインをいち早く提案した。OEMの受託案件を中心に事業を展開してきたイヨベ工芸社だが、それは単に言われたことを正確に行うのとは違う。むしろ「言われたことだけに終始しない」ことが活躍の要因だ。
五百部社長は、創業当初から一貫して逆提案型の会社であることを社員に求め続けている。「言われたものを作ってるだけじゃ今頃この会社はなかったと思いますよ。プロの目線から提案するプラスアルファが次の仕事を生むんです」。
海外の有名メーカーからも信頼される技術力で自社ブランド展開へ
適切かつ期待を上回る提案を行うには、一人ひとりのアンテナの高さが重要。国内だけでなくミラノサローネなど海外の展示会にも頻繁に足を運ぶ。技術の高さは国外からも評価が高く、海外ブランドから同社への注目は熱い。世界6カ国の人気ブランドとライセンス提携して日本国内向け家具のOEM生産を請け負い、ハウスメーカーなどを通して販売している。
OEMの世界や公共空間の家具を扱う黒子として活躍してきたイヨベ工芸社だが、満を持して独自のブランドを立ち上げるべく、2013年には「SOFA STUDIO」を開設、場面や雰囲気の異なる複数の空間を作り上げている。高品質なインテリアは暮らしを大切にする個人層にも好評。イヨベ工芸社の言う「良いものをつくる」とは、単に高い技術のものや思いのこもったものではない。日々技術を磨きながらも常に最新の社会動向や先端事例に目を向け、現状の一歩先を行くアイデアで顧客の高い期待をさらに越え続ける。