柔軟な対応が地産地消、国産食材の使用を可能にする
子どもの口に入るものだからこそ、安心・安全に徹底的にこだわるのが学校給食の特徴。食材の調達は各校の栄養士に一任されているが、缶詰ひとつとっても外国産の3倍も値がはる国産品を選ぶ学校は少なくない。そのニーズに応えるのが学校給食に特化した食品納入業者、丸幸水産。一般の八百屋は野菜を市場で仕入れるため産地を絞ることが難しいが、都内の農家と直接契約を結ぶことで「地産地消」の食材納入を可能としている。
かつて、学校給食も家庭と同様に「肉は肉屋、野菜は八百屋」が仕入れの基本だった。しかし限られた給食予算の中で国産食材を選ぼうとすると、個別に仕入れるより同じ業者でまとめて発注する方が価格を抑えられる。もとは水産物の専業だった丸幸水産がその他の食材も扱い始めて約10年、良い食材を安価で仕入れたいという学校給食業界において需要は年々高まっている。
食品の仕入れなら築地市場というのが常ではあるものの、実は築地では昭和62年を境に鮮魚の取り扱う量が減少しており、現在はピーク時の約半分。あくまでも鮮魚の提供に重きを置いて、必要に応じて全国の産地業者から直接買い付ける手段を取っている。状況を見てより適切なルートから良い食材を仕入れる。柔軟な発想がクオリティの担保に繋がり、それはまた同社への信頼を生み出している。
子どもの食のために、魚のクオリティを上げたい
気候や環境の変化から産地が変わり仕入れが難しくなった魚も少なくない。価格の上昇は免れられないが、付加価値をつけながら、高くとも国産の上質な水産物を選んでもらう工夫を凝らしている。中小企業にとって利益は看過できないが、小堺社長は「最終的には給食を食べる子たちが『おいしい!』と思うかが重要」という姿勢を崩さない。
現在の対応エリアは東東京10区が中心。輸送距離を短縮しなるべく良い鮮度の食材を届けられるよう、江東区周辺の近場の学校給食にのみ食材を納品している。今後も、エリア拡大よりもエリア内で多くの学校に新鮮な国産食材を提供したいと語る。「自分たちが食材を届けられる範囲は限られていますから、少なくともその範囲内では子どもたちが口にする魚のクオリティを上げたい」。若き社長が東京の学校給食の品質を支えている。