シャンプー難民の駆け込み寺、その正体はパーマ液のパイオニア
新御徒町駅のそばに「手づくりシャンプー専門店」と書かれた店がある。ドライフラワーやボタニカルアートで彩られた店内には、シャンプーやトリートメントなどオリジナルのヘアケア製品が並ぶ。市販のシャンプーは肌の弱い方やアレルギー体質の方には刺激が強いが、この店のシャンプーはそういった人々からも評判が良く、シャンプー難民の駆け込み寺としても知る人ぞ知る存在になっている。
実はこの店は、美容師業界で知らない者はいないといわれるパーマ液の老舗、タマ美容化学の本社兼直営店。コールドパーマが一般的でなかった1955年に亀戸で創業、同社のパーマ液は今なお亀戸の工場から卸売業者を介して販売され、日本全国の美容院で使われている。人気の秘訣は、製品の品質と効果の高さ。他社製品に比べトリートメント成分が豊富で、かつパーマがしっかりかかると評判だ。昨今は髪へのダメージを気にする人が増えているため、髪を傷めにくいパーマ液のニーズは高い。
現場の声を取り入れ、ニーズに即した製品を小ロットでも開発
売上だけなら大量生産のできる大手ヘアケアメーカーに軍配が上がる。しかし、さまざまな顧客を相手にする美容院では、顧客の年齢層や気候、個人差によって大手の製品が合わないケースも多い。
工場長は過去に美容師経験があり、現場事情も心得ている。ディーラーを介して寄せられる現場の声を参考に、ダメージヘアに特化した製品、短時間で効果の表れる製品、時間をかけてしっかり効かせる製品など、特徴的なパーマ液の製造を小ロットでも柔軟に対応するのは、中小企業ゆえの強みと言えるだろう。
個性豊かな少数精鋭のチームが伝統と信頼をアップデートする
製品開発に携わるのは、化学知識が豊富な前社長。そこに元美容師の工場長が加わり、製品に現場のトレンドを盛り込む。個性的な製造部隊のバランスを社長が俯瞰的に把握することで、積年の信頼を裏切らない高品質の製品が世に送り出されている。
さらに、店舗をオープンした2014年頃からは調香師が合流。シャンプーの香りをオリジナルで調合するサービスやアロマの効能が学べるワークショップは、新たな顧客層からの注目を集める。製造には関わらないものの、アイデア豊富なバックオフィスのメンバーも心強い。歴史あるタマ美容化学が60余年を経た今も業界のリーディングカンパニーでいるのは、少数精鋭の社員たちが欠けることなく活躍しているためなのだと感じさせられた。