Out of the Boxな 紙の箱

ワタケイ紙器株式会社

1965年の創業以来、カバン梱包用の貼箱を製造している。近年では香水や菓子などのハイブランドから特注品のパッケージ注文が増加。工場生産が難しい小ロットで高品質の貼箱を得意とするが、その秘訣は特殊な技術や機械ではなく丁寧で緻密な手作業にある。

貼箱、各種紙器パッケージの企画・製造・販売
Watakei

ワタケイ紙器株式会社

住所
〒136-0072 江東区大島2-9-28
tel
03-3682-6074
fax
03-3682-6108
代表
渡辺 栄司
URL
https://watakei.tokyo/

あらゆる業界から注文殺到、小ロットの特殊加工で光る手作業

大島に根を下ろして約50年、ワタケイ紙器は2代にわたり貼箱を製造している。もとはハンドバッグや財布など皮革製品を運搬するための箱が主流で、装飾や細部へのこだわりは二の次だったというが、大手和菓子店からの発注をきっかけに製菓をはじめとした食品業界にも販路を拡大。菓子は贈答品として購入されることも多く、外箱が中の菓子の商品価値を高める役割も持つため、丁寧で美しい装飾が求められる。実績を重ねるとともに技術力が向上し、今ではあらゆる業界から貼箱の注文が寄せられている。

印刷や裏打ち、箔押しなどの加工は協力会社に委託し、ワタケイ紙器では裁断から組み立てとくるみ貼りを主に担う。最大で1万箱ぐらいまでは引き受けるが、得意とするのは社員の手作業と点検が活きる100個前後の小ロット製造。その分、大きな工場ではコストの都合で受けられない特殊加工にも柔軟に対応することができる。

0.5mm単位の調整もいとわない、必ず期待に応える

例えば、演劇や歌舞伎の売店で演目ごとに売り出される土産品も、オンデマンド印刷の導入により、小ロットで印刷紙を変えて製造できるようになった。また、有名洋菓子店が広島のデニムメーカーとコラボレーションでマカロンを発売した際には、デニム地への裏打ちと糊の配合を調整して貼り付けに成功、布地の貼り箱を完成させた。

学校や幼稚園で使われる道具箱の注文が入った際は、「児童が不用意に壊さないこと」「箱の角で誤って怪我をしないこと」という対照的な課題に頭を抱えたが、芯材やPP加工などを採用することで強度を高めた。角を丸める作業については専用の工程を持たなかったため、身近な道具を見繕って手作業で仕上げたという。いずれもライン生産では実現できない(もしくは生産数に見合わない高額になってしまう)加工だが、ワタケイ紙器は工夫と丁寧な作業で実現させた。

「それはできません、って何度も言ったんですよ」と代表は笑うが、一度引き受けた以上は徹底的に工夫と試行錯誤を重ね、期待に応えられるものを納品するのがワタケイ紙器のやり方。嵌合の精度を求められればサンプルを作って0.5mm単位で検討する。「デザイナーがイメージしたものにいかに近づけられるかを追求している」という同社の貼箱は、表立って名乗る機会こそ少ないが、多方面で揺るがぬ信頼を勝ち得ている。